10月20日は「疼痛ゼロの日」


イベントレポート

JPAP®メディア・フォーラム特別編
高校生「新聞部」対象プレスセミナー“がんの痛みと緩和ケア”
~現役記者が語る、医療記事の書き方を通して~ 開催報告

「今、緩和ケアがなぜ重要か?」
亀田総合病院 緩和ケアチーム 米国緩和医療専門医 関根龍一氏

JPAP®が主催するオレンジサークルアワード(チームで緩和ケア活動の普及と治療の発展に貢献した優秀施設を表彰するアワード)で、2008年の最優秀施設に選ばれた亀田総合病院緩和ケアチームの関根龍一氏より、「今、緩和ケアがなぜ重要か?」と題した講演が行われました。

冒頭で、緩和ケアには課題が多く、参加している学生の皆さんと、その課題について一緒に考えたいとのお話があり、参加した皆さんに対して「今、幸せですか?」、「最も大切なものは何ですか?」という問いかけから講演が始まりました。参加者の中には、よく分からないと言う人も多くいましたが、緩和ケアが目指すものは、治療を受けた人が「幸福であるか」ということにあり、その人にとって「最も大切なものは何か」を考えることが重要になると言います。最も大切なものを考えるためには、まず身の周りにあるものを書き出し、捨てていいものから消していく方法があるそうです。消していって最後に残るものは何か、皆さんも一度考えてみて欲しいとお話されました。

緩和ケアは、がんと診断された初期から積極的な治療に並行してサポートする治療であり、ターミナルケアとは少し意味合いが異なり、欧米などの先進国では、緩和ケアを受けることは『基本的な人権』とまで言われているそうです。それに比べると日本における緩和ケアの浸透は遅れていると言います。在宅における緩和ケア、看取りに関してもその数は少なく、ホスピスも、入所希望数に対して受け入れ可能なベッド数が不足した状況とのこと。今後、『一般病院での緩和ケア』をがん治療の一部として提供していくことが大切になると言います。

さらに、医療用麻薬への恐怖と偏見が根強く、日本の医療用麻薬の使用量は米国に比べて6分の1以下というデータがあることを強調されました。WHO方式の痛み治療で8割、9割の痛みはコントロールできますが、日本における除痛率は、ある調査では23%という数字もあるとのこと。また、医療用麻薬を使用したくないという人もおり、別の調査では最後の薬という認識が強いということも示され、日本における医療用麻薬への抵抗感は根強いものであると言うことです。

続いて実際の治療現場の症例として、積極的な治療を支えるための緩和ケアを必要とされた北海道のがん患者さんのお話が紹介されました。この患者さんは抗がん剤もほとんど効かない難しい状況でしたが、治療の希望が強く、緩和ケアを行うことで前向きに治療を続けることができたと言います。このような緩和ケア治療が行われることはまだまだ少ない中で、「今後、日本の緩和ケアを良くしていくためには、国民一人ひとりが作り上げるという意識を持つことが大切で、誰かにお任せではよくない。緩和ケア等の医療問題は、医療者側の原因と医療の受け手(国民一人ひとりのあり方)による原因があり、これを『複視眼的な目』で理解する必要がある。将来社会のリーダーとなる皆さんには、どのような医療を目指すべきかを自ら主体的に考えて欲しい」ということを強調されました。

がんになる人が人口の半分、がんで亡くなる人が3分の1ですので、がんは最も多い病気の一つ。がんは、緩和ケアをがん以外のより広い領域に広げていく過程の一つの旗印になると言います。「緩和ケアの問題は、根本的にはあなた自身が“どのように生きるのか?”、“最も大切なものは何か?”を考えることと同じ。夢や希望を大切に、皆さんの将来に大いに期待しています。」と話して講演を締めくくりました。