

市民公開講座
『山形県における「がんの痛み治療と緩和ケア」の取り組みの実情』開催報告
8月30日(日)、山形県や近隣の方々に「がんの痛み治療」と「緩和ケア」に関する知識と理解をさらに深めていただくために、米沢市市民文化会館(山形県米沢市)にて置賜地区緩和医療研究会とJPAP®の共催による市民公開講座『山形県における「がんの痛み治療と緩和ケア」の取り組みの実情』を開催しました。当日は、総選挙の日でもありましたが140名近くの方にご来場いただきました。
今回の講座では、置賜地区における緩和ケアの取り組みや、がんの痛みを取ることの意義などについて分かりやすく解説する内容で、聴講された方々も非常に熱心に聞いていらっしゃいました。
シンガーソングライターの松尾貴臣さんよりミニライブがありました。
松尾さんのオリジナル曲「喜びの歌」のほか、「ふるさと」といった童謡など5曲を披露していただきました。
置賜地区における緩和ケアの取り組み、特に在宅緩和ケアの推進活動についてお話いただきました。三友堂病院では、緩和ケア病棟に入る患者さんのうち9割は自分の家で家族と過ごしたいという在宅治療の希望があるそうです。そのような現状の中、より多くの患者さんに在宅療養を実現するため、診療所、病院間のさらなる連携が必要ということで昨年より地域緩和ケア推進事業”置賜プロジェクト”を立ち上げられました。医療者向けの勉強会や研修会などを実施する中で、実際に地域における意識の高まりを感じているとのことでした。さらに地域完結型の地域緩和ケア連携システムとして患者さんの希望に応じた緩和ケアを提供する「愛のネットワーク」も三友堂病院地域緩和ケアサポートセンターを中心として活動を開始。医療施設などへのアドバイザー派遣や緩和ケア出張講座を開催することで知識・技術の指導支援や情報交換を行っているとのことです。
「愛のネットワークは、医療・介護・福祉が三位一体となり患者さんのために尽くしていきたいと思います。」と患者さんの自宅を中心とした地域の連携体制の充実をめざすことをお話されました。
がんになるとかなり早い時期から痛みが出てくるため、痛み治療が大切になってきます。WHO方式がん性疼痛治療法には、痛みの治療とがん病変の治療とを並行して受ける必要があり、70~90%のがん患者の痛みをモルヒネが消失させると記載されています。このモルヒネ(医療用麻薬)は、がんの痛みに有効な強力な鎮痛薬です。末期がんにしか使えない薬などといった様々な誤解や偏見がありますが、モルヒネについて正しい情報を知って、使用することが大切です。痛み治療とは単に痛み止めを使うことではなく、十分な副作用対策をして確実な鎮痛量を使って、患者さんが「痛みが楽になった」と実感することです。この痛み治療を一般の方に理解してもらうために、三友堂病院では“痛み外来”や“痛みの教室”が開催されています。
「がんの痛みは治療できる症状であり、治療すべき症状です。痛みは患者さんにしかわかりません。薬の効果も患者さんしか判定できません。がんの痛みをとるには賢い患者さんになりましょう!」と強調して講演が終りました。
朝日先生が出会った患者さんとのエピソードを交えながら、痛みをコントロールして前向きに生活されたお話、また、ご自身のがん体験をお話いただきました。
30年ほど前、がん患者さんの痛みを取ることがまだまだ難しい状況だった頃、イギリスの論文でモルヒネ内服薬が有効と発表され、朝日先生は、早速モルヒネを患者さんに処方したところ「痛みが楽になった」という言葉をもらったそうです。その後、MSコンチンというモルヒネ製剤が発売され、がん患者さんの痛みのコントロールがとても簡単にできるようになりました。しかし、この医療用麻薬にまだまだ医療者の中で認識不足な現実があり、痛みのコントロールが十分なされていない患者さんがいらっしゃるとのことです。「人間にとって一番嫌な症状のひとつは、痛みです。末期の患者さんの病気を治すことは、難しいことですが、痛みを取ることはできます。患者さんの痛みを取るのは、医者の義務です。」と医師からも患者さんの立場にたって痛みを取る努力や工夫が大切であると強調されました。
最後に、よりよく生きるための心構えとして、「未来に対する夢や希望を常に持ち続けることが大切です。人間はいずれ死ぬので、どうやって死ぬのかということについて考え、いつも笑顔でいることをお勧めします。」と締めくくられました。先生のユーモアあふれる明るいお話で会場には笑い声がたくさんあふれた講演となりました。