10月20日は「疼痛ゼロの日」


インタビュー

栗山真理子さん(日本患者会情報センター代表)
渡辺千鶴さん(日本患者会情報センター事務局長)

患者参加から患者との協働へ。

―― がん性疼痛に関する声は増えているのでしょうか?

渡辺
痛みに関して医師と患者さんの受け止め方にはギャップがあるように感じます。医師の中には、病気になれば痛いのはあたりまえだと思われている方がいますが、患者さんにとっては、痛みというのは気持ちの上でも生活の質を向上する上でも主要な部分を占めています。本当はいろいろな痛みを堪えずに訴えてもらうといいのですが、なかなか外に出せないでいると思います。また、痛みは個人差が大きいので、医師が患者さんの訴えにしっかり耳を傾けることは重要です。そうすることで、次のケアにも生かすことができると思います。
栗山
患者会情報センターは患者会と行政の橋渡しをする役割になりますので、患者さんの声が自然に集まってくるということはありませんが、個人的な活動の中でがん性疼痛に関しての話をよく聞くようになりました。社会的な関心は高まっていると感じますので、がん性疼痛をテーマにして患者会に声がけすると、色々と声が集まってくるかと思います。

―― 実際に患者さんの声を聞きたいという時には、どうすればよいのでしょう?

栗山
データベースから直接連絡してもらってもかまいませんし、もっと大きく取り組むこともできます。例えば、私たちの最初の事業として「家族と専門医が一緒に作った小児ぜんそくハンドブック2008」(以下、「小児ぜんそくハンドブック2008」)という一般向け診療ガイドラインをつくりましたが、これは患者さんと一緒に作ろうと考えてくださった先生がいたことがはじまりでした。データベースに登録している団体だけではなく、アレルギーに関係して世の中で活動しているすべての団体にレターを送り、日本小児アレルギー学会がこんなことを考えているので参加を希望する団体はお返事くださいと声がけし、4団体が集まりました。そして、学会と患者会の間に私たちがコーディネーターとして入って、ハンドブックという形になりました。歯科学会でもそのような形でコーディネートさせていただいております。疼痛治療に関しても、このような形で、患者さんの声を集めたいということで関連団体にご協力のお願いをして、間を取り持っていくことも可能だと思います。

―― 医療者と患者さんが一緒につくる「場」ができるのですね。

栗山
私たちは「患者参加」から「患者との協働」へと言っています。医療者と患者さんでどんなことが一緒にできるかを、最初から同じ土俵で話し合ってつくり上げていきます。
渡辺
医療者と一緒によいものをつくりたいという心の準備ができている患者会は増えていると思います。特にがんの患者会はモチベーションが高く、がん対策基本法ができて、自分たちは社会資源であると目覚めた団体も多くなってきていますので、協働の可能性はますます高くなっています。
栗山
患者会は、学会や行政、社会から求められることによって自分をブラッシュアップしていき、目覚しく成長していきます。私はアレルギーの患者団体の主催者ですが、様々な努力を通して、最初にガイドラインの作成に参加した患者団体となり、社会が認めてくださることで、相互作用により目覚めが広がりました。先生方は私たちのような団体があることを知らなかったですし、4団体もそれぞれ個性が違います。私たちは主に教育機関への理解を広げようとしていますし、行政との関わりや病院との連携が上手な団体などもあります。しかし、あるひとつのことを中心にすれば、それぞれの違いを違いとして認めて、できることを集めていくことができるのです。

―― みんなで一緒につくっていくというモードにかわることに大きな意味があるのですね。

栗山
そう思います。
渡辺
そして、そこに第3者がかかわることでそれぞれの立場の人たちの意識が一つにまとまっていくのだと思います。患者と医療者との協働作業は始まったばかりで、お互いの専門性をどのように生かしていけば、よりよいものを作り上げられるのか手探りの状態が続いています。特に第3者は、それぞれのステークホルダーが独立し、自分の役割や専門性を発揮しながら協働できる場になるように、しっかりサポートしていくことが大事だと思います。当センターは京都大学の中山健夫教授が主任研究者を務められる厚生科学研究班の研究協力者として「診療ガイドライン作成過程への患者・支援者参画のためのガイドライン(PIGL)」を開発しておりますので、これをベースに“場”の支援をしています。
栗山
患者会には色々な段階があると思いますが、声を届ける方法、場を学んで、今は一緒にやっていこうという姿勢の患者会が増えています。先生の思っていることと患者が願っていることを翻訳して相互理解につなげるのです。先生方は思いこんでいるところがあり、患者さんが求めているところと少しポイントがずれてしまうことがあります。立場が違うからあたりまえのことで、私たちは、「疾患がある中で日常生活を送る上での専門家」として「医療の専門家」である先生に話をして、すり合わせをしていくのです。
渡辺
患者さんを巻き込んで、患者さんから患者さんに広げていくことで、がん性疼痛に関する正しい理解の普及が早くなると感じています。