がんの痛みについて


医療用麻薬について

モルヒネなどのオピオイド鎮痛剤について

モルヒネをはじめとする医療用麻薬はオピオイド鎮痛薬とも呼ばれています。 医療用麻薬を代表するモルヒネはあへん(阿片)から作られます。けし坊主を傷つけるとそこからしみ出してくる粘液を固めて作ったものがあへん(阿片)です。また生体内のオピオイド受容体に作用する物質を総称してオピオイドと呼びます。モルヒネはオピオイド受容体に結合して鎮痛効果をあらわすオピオイド鎮痛薬の代表的なものです。オピオイド鎮痛薬には色々な種類があります。モルヒネの他にコデイン、フェンタニル、オキシコドン、ブプレノルフィンなどがあります。

有効限界がないこと

WHOのガイドラインである「がんの痛みからの解放-WHO方式がん疼痛治療法-第二版」には「複数の研究によって、モルヒネと一部のオピオイド鎮痛薬には有効限界(ceiling effect)がないことが明らかにされている。モルヒネは、患者の痛みが緩和するまで増量できる薬なのであり、副作用に患者が耐えられる量である限り過量投与となることがない薬である。

モルヒネには標準投与量というものがなく、モルヒネの適切な投与量とは、痛みを消失させる量なのである。この適切な量が患者ごとに異なるため、少数の患者で痛みの除去に必要な1日分の経口投与量が数千mg以上となることがある」と、有効限界がないことを記載しています。これはオピオイド鎮痛薬の他の薬剤にはない基本的特性です。

世界保健機関編、武田文和訳、金原出版株式会社P46

不安や誤解のために

主なオピオイド鎮痛薬に対する代表的な不安や誤解について、以下に解説いたしました。

■モルヒネ中毒になる?
医療用として痛み止めに適正に使用される場合、精神的な依存性(いわゆる薬物中毒;異常に薬剤に執着する状態)はほとんどみられません。いつでも中止や減量が可能です。しかしそのときに身体的依存症状(退薬症候群;倦怠感、不安、不眠、興奮など)が発現することがあります。が、徐々に減量することによりそれらの症状を避けることができます。

■使用を継続すると耐性が生じて、どんどん効かなくなる?
耐性が生じることがあります。しかし実際に耐性が生じてオピオイド鎮痛薬が使いにくくなることは実際には少ないと考えられています。オピオイド鎮痛薬を使用しているにも関わらず、痛みが強く感じられる場合、まず痛みそのものが病状によって強くなったことが考えられます。そのときはオピオイド鎮痛薬を痛みがなくなるまで増量します。それでも痛みが消失しない場合はオピオイド鎮痛薬が無効の新たな痛みが生じたと考えられますので、それに対する治療を開始します。

■モルヒネが使われだすとすぐ死ぬ?
これは20年程前、使いやすいオピオイド鎮痛薬がまだなく(当時は短時間作用型の経口薬や注射剤しかありませんでした)、またモルヒネが誤解され、恐れられていたため、死の直前になってようやく使用されたために生じた誤解と考えられます。現在ではがん治療の早期からオピオイド鎮痛薬が使用されるケースが増加しつつあります。痛みを上手にコントロールすれば、がんの治療を成功させ、社会復帰を果たすことも可能です。緩和医療はもちろん、より良く生きるために必須な薬剤なのです。